2020年09月22日 │ 地域の情報
【神道】のお葬式 ~葬場祭(そうじょうさい)について~
ありがとうございます。
長野県長野市・中野市・山ノ内町を中心に、お葬式・家族葬・御法要のお手伝いをさせていただいております、ベルホール吉池・ベルハウスの土屋正雄です。
日本のお葬式はほとんどが仏教に基づく『仏式』で行われます。
神主様がお見えになり、御導師として行われる『神道』のお葬式は葬儀全体の数%程度に留まるといわれています(地域により若干の差異があります)
割合としては決して多い数字ではありませんが、日本各地に古くから伝わるお葬式として、その考え方や作法は、慣習やしきたりとして受け継がれているものも少なくありません。また最近では質素でわかりやすいということから、改めて神葬祭に関心が高まっているともいわれています。
ここでは神道の葬儀の流れやマナーなどについてご説明します。
※あくまで一般的な考え・流れのお知らせです。地域・導師の神主様によって、作法・お考え方・流れ等々、若干の違いがある場合がありますのでご承知おきください。
【神道の葬儀『神葬祭』とは】
私たちの地域では「神葬祭」=「葬場祭(そうじょうさい)」と呼びます。
神道の世界では、亡くなった人は神々の世界へ帰って子孫を見守ると考えられています。
こういった考え方から、神葬祭は故人を子孫の家に留めて守護神になってもらうための儀式という意味合いがあります。
【『葬場祭(そうじょうさい)』のふたつの意味】
葬場祭(そうじょうさい)には、「穢れ(けがれ)」と「先祖崇拝」の2つの大きな概念があります。
「穢れ(けがれ)」というのは、「生命力が減衰した」状態です。「気」が「枯れる」と書いて「気枯れ(けがれ)」とも書きます。悪い状態を「穢れ(けがれ)」ととらえ、お払いをすることにより清められるとされます。
神道の考えでは、死は上記の様に「穢れ(けがれ)」たものとされているため、葬場祭(そうじょうさい)は神社では行いません。御自宅や、私たちの葬儀社の会館にて行われます。
葬場祭を執り行うことで、不幸が起きたという非日常の状態を祓い清め、不幸が起きていない日常の世界に戻すという意味があります。
(地域によりますが)お葬式の際に
●お茶碗にお箸を立てる
●屏風を逆さまにする
●故人の布団を上下逆に掛ける
などの光景が見られますが、これらはいずれも現在非日常の世界にあることを表しています。葬場祭の後に元に戻すことで、日常が戻ったこと表します。
一方、祖先崇拝というのは、自分たちの祖先が、守り神として一族を守ってくれる存在という考え方です。
故人は葬場祭の後、祖先神となります。霊璽(れいじ)に故人の御霊(みたま)を移し、祖霊舎(それいしゃ)に祭ることで遺族・親族の一族を守る存在になると考えられています。
【葬場祭の歴史】
神道は縄文時代から弥生時代を経て古墳時代にその原型ができたといわれています。
その葬儀については
「喪屋を作りて、河雁を岐佐理持とし、鷺を掃持とし、翠鳥を御食人とし、雀を碓女とし、雉を哭女とし、如此行ひ定めて、日八日夜八夜を遊びき」
と、日本最古の歴史書である『古事記』にアメノワカヒコの葬送の様子が記されています(神社本庁 HPより)
しかし、公に神葬祭が行われるようになったのは最近のことで、江戸時代以降からです。それまでは江戸幕府によって檀家制度が確立されたため、葬儀も寺院がすべて執り行っていました。
明治時代になると、明治政府の政策によって初詣や七五三といった神道由来の行事が定着したのに対し、神葬祭はあまり定着しませんでした。
【神道の葬送】
神葬祭の特徴として、統一された式次第がないことが挙げられます。
神道は自然と祖先への崇拝をベースにして自然発生した民俗信仰なので、地域、神社、さらに神葬祭、ここからは神葬祭の比較的一般的な流れと、仏式との違いを紹介していきます。
【神道の葬儀の流れ】
神道の葬儀は、以下のような順番で執り行われます(地域にもよります。あくまで一例です)
神葬祭の流れ
1、帰幽奉告(きゆうほうこく)
訃報を聞いたあと、神棚や祖霊舎(それいしゃ、仏壇に相当するもの)に対して故人の死を奉告儀式です。神棚や祖霊舎の扉を閉じ、白い紙を貼って塞ぎます。
2、枕直しの儀
遺体を北枕にして部屋に安置し、白い布で顔を覆います。
枕元に守り刀を置きます。守り刀には悪霊から死者を守るという意味があります。
遺体の近くに祭壇となる小さな台を設置し、その上に米・塩・水・故人の好物を乗せます。
3、通夜祭と遷霊祭
仏式での通夜にあたる儀式です。
通夜祭が始まると神職の人と雅楽を演奏する人が式場に入場し、神職が祭詞(さいし)と祭文(さいもん)を唱えます。
祭詞や祭文とは故人の安らかな眠りを祈り、子孫の家の守護霊として家を守ることを願う言葉だと考えてください。
このとき遺族を含めた参列者は、玉串(後述)を捧げて礼拝などを行います。
続けて遷霊祭(せんれいさい)が行われます。これは故人の魂を遺体から抜く儀式で、これによって霊魂が身体から離れ、遺体は魂のない亡骸になると考えられています。
魂は霊璽(れいじ)という、仏教でいうところの位牌に移った状態になります。
4、納棺の儀
遺体を清めて白い装束に着替えさせ、棺の中に遺体を安置します。
白装束を着せず、遺体に上に白い布をかけるだけのこともあります。棺のふたを閉めた後は、その上を白い布で覆い、祭壇にお供え物をして全員で礼拝を行います。
5、火葬
火葬で神職が祭詞を奏上し、参列者が玉串を捧げる儀式です。火葬祭が終ったら遺体を火葬します。
6葬場祭
大まかな流れは通夜祭と大体同じですが、弔電の朗読や喪主よる挨拶などが行われます。
7、帰家祭(きかさい)と直会(なおらい)
本来は、火葬や埋葬をして自宅へ戻ったときに行うのが帰家祭です。手や塩や水で清めて、葬儀の終了を霊前に奉告することが目的です。
その後は直会に移り、神職や関係者の労をねぎらうための宴を開きます。
以上で葬儀はすべて終わり、この後は節目となる日や年に供養となる霊祭を行います。
7、埋葬祭
お墓に御遺骨を埋葬する儀式です。かつては火葬場から遺骨をもって埋葬するお墓へ直接行くことが多かった様です。
近年は葬場祭後に、御遺骨を一度自宅へ持ち帰って50日後に行われる「五十日祭」で埋葬することが多いようです。五十日祭とは、仏教の四十九日に相当する行事です。
【神道と仏教の違い】
既に述べたように、神道と仏教ではお葬式に対する考え方が根本的に違います。
しかし葬儀の進行自体は類似点が多いので、仏式の葬儀に慣れた人が神道の葬儀に参加しても混乱するシーンは少ないかもしれません。
ただし、神道と仏教では儀式の内容は似ていても名称が異なることが多くあります。
そこで、以下によく使われる用語の例を挙げていきます。
仏教 神道
僧侶 神職
喪主 斎主(さいしゅ)
位牌 霊璽(れいじ)
お布施 御礼、御祭祀料、御玉串料など
供物 神饌物(しんせんもの)
焼香 玉串奉奠(たまぐしほうてん)
法要 霊祭(れいさい)、式年祭(しきねんさい)
戒名・法名 諡号(おくりな)、霊名など
お斎(おとき) 直会(なおらい)
初七日 十日祭
四十九日 五十日祭
一周忌 一年祭
*厳密には違うことを指す用語もありますが、わかりやすさを考慮して1対1で対応させています。あくまで一例です。また、地域により異なる呼称もあります。詳しくはお問合せ下さい。
【神道の葬儀のマナー】
神葬祭へ出席する際に、1番気になるのはマナーや作法ではないでしょうか?特に気を付けるべき内容をここでは紹介します。
〇服装
仏式のお葬式に行くときと同じ服装で構いません。
喪服を着て、アクセサリー類はできるだけ外してください。
なお、数珠は仏教のお葬式で使うものなので、神道のお葬式には必要ありません。
〇言葉
まず、神道の世界では死は悲しむべきものではないとされています。このため、哀悼の意を述べるのは神葬祭の場では不適切となります(あくまで一説です。地域によります)
「お悔やみ申し上げます」と伝えるべきシーンでは、「このたびは突然のことで...」などと言葉を変えることをおすすめします。
また、仏教由来の言葉を使うのを避けましょう。
例えば「成仏」「冥福」などは仏教の考え方から生まれた言葉であり、神道の考え方にはなじまないと考える方もいらっしゃいます。このような場合は、「平安」と言い換えるとよいでしょう。
例えば、「ご冥福をお祈りいたします」を神道式に言い換えると、「御霊のご平安をお祈りいたします」となります。
〇玉串奉奠
仏式の焼香やキリスト教の献花に相当するのが玉串奉奠です。
「玉串」とは榊の枝に紙垂(しで)という紙を付けたものです。この枝を霊前に捧げるのが玉串奉奠です。玉串の捧げ方は次の通りです。
※ 玉串奉奠の流れ ※
1. 玉串奉奠の列に並びます。
2. 自分の順番になったら、次の人に軽く会釈して進み出ます。
3. 遺族、斎主に一礼します。
4. 玉串を受け取ります。丁寧に礼儀正しく、両手で受け取ってください。
5. 玉串を胸の高さにキープしながら、左手側で枝の葉に近い部分を持ち、右手で枝の付け根部分を持ちます。左手が奥、右手が手前になるような持ち方です。
6. 玉串を地面に対して垂直の状態にします。左手が上、右手が下です。
7. 枝の先が地面を、枝の付け根が天井を向くように、玉串を時計回りに180°回転させます。
8. 枝の付け根が遺影の方向を、枝の先が自分の方を向くようにして、指定の場所に玉串を静かに置きます。
9. 遺影に2回お辞儀をして、音を立てないように2回拍手を打ちます。その後もう1回お辞儀をします(「2礼2拍手1礼」にて行います)
10.後ろに下がって遺族と斎主に一礼し、自分の席に戻ります。
※上記は「玉串奉奠」の一般的な流れです。地域や神葬祭を行う神社、神職によっても異なります。詳しくは葬儀社または、神職に確認しましょう。
〇神道の葬儀の香典について
香典に使う封筒(不祝義袋)は市販されていますが、神道では表書きは「御霊前」「御玉串料」となります。
蓮の花が描かれた不祝義袋は仏教用なので、神道の葬儀には使用しません。
また、水引の色は黒と白のものか、双銀のものを選ぶのが一般的です。また、香典の額自体は仏式のときと同じで構いません。
【まとめ】
神道の葬儀は神葬祭といいます。特別なルールがあるというよりは、もともと日本の各地にあった葬儀が今の神葬祭の基本となっているため、地域によって作法や流れは異なります。
式次第は仏式の葬儀に似た部分が多いのですが、差異も多く見られます。
〇仏教の用具である数珠を使わない
〇仏教の言葉である「冥福」「成仏」などを使わない
と、いった注意が必要です。
ありがとうございます。